本書は、一貫して犯罪に関する研究経歴を重ねてきた著者が、自身のこれまでの研究を総括して世に問うた力作である。
この著書の意図と要点に関しては著者自身が「序章」と「終章」において詳しく述べておられるが、私なりに本書の価値を述べるならば、それは@意図(目的)の明確さ、A複合的なデータ収集の方法、B理論志向にあるということができる。
@については、クライム・セイフ(犯罪からの安全)が研究の底に一貫して流れている問題意識である。
Aについては、本書の第U部「調査」の3つの章において遺憾なく発揮されている。調査票を用いた統計的調査にとどまらず、ボランティア団体を対象に実施した聞き取り調査、そして犯罪防止NPOを対象とする参与観察といった具合に、必要とあれば一つの調査方法にこだわらず多様な調査方法を駆使して積極的にデータを収集している。
Bは本書の中核部分である。犯罪統制のためには従来考えられていたフォーマルとインフォーマルな統制だけでは限界があり、セミフォーマル(準公式)な統制が強化される必要がある。そしてセミフォーマルな統制の担い手として期待されるのがNPOである。なかでもガーディアン・エンジェルスのようなNPOはコミュニティ(特定の市町村)の外からも成員を補充しかつそれを超えた活動をしている。著者はこれをコモンズと呼び、コミュニティとコモンズの二重構造の存在意義を強調する。そして著者自身の簡潔な結論によれば「5Cと5Mを軸足にした犯罪防止NPOによるセミフォーマル・コントロールがはめ込まれたコミュニティとコモンズ!二層構造こそ、来るべき時代にふさわしいクライム・セイフの新たな条件である」。ここで5CとはNPOによる活動方法であり、5Mとはその活動がもたらす効果である。それらが具体的にどのような活動と効果を意味しているかは、本書を味読願いたい。